【第6回】大型株 vs 中小型株、上場来高値投資に向いているのはどっち? では、
時価総額による値動きの特性の違いについて解説しました。
上場来高値(ATH)更新は非常に強力なシグナルですが、残念ながら100%成功する魔法の投資法ではありません。プロの投資家でも「ダマシ」に遭うことは日常茶飯事です。
大切なのは「予測が外れた時、いかに早く、冷静に逃げられるか」。
今回は、上場来高値投資において資産を守るための「撤退ルール」を具体的に解説します。
損切りラインはどこに置くべきか?
結論から言うと、「ブレイクした基準線(過去の最高値)」の少し下に設定するのが最も合理的です。
- 理想的なライン: ブレイクラインから -3% 〜 -5% の位置
- 理由: 本物のブレイクであれば、抜けたラインが今度は「下値支持線(サポート)」として機能します。そこを大きく割り込むということは、そのブレイクは「ダマシ」だった可能性が高いからです。

こちらは2020年初頭の富士通(6702)の日足チャートです。1/9に上場来高値を更新しますが勢いは続かず、1/30にはブレイクラインから-5%超のラインまで逆行してしまいます。 その後、決算を受けて再度ブレイクする場面もありましたが、高値圏を維持できず最終的には1,094円を大きく割り込み、800円台まで下落しました。「ラインを割ったら一度逃げる」という規律が、その後の大きなドローダウン(資産減少)から身を守ってくれたパターンです。
「指値」か「終値」か?判断のタイミング
損切りを実行するタイミングには2つの考え方があります。
逆指値(指値)で機械的に切る
株価が設定したラインに触れた瞬間、自動的に売却する方法です。
- メリット: 感情が入らず、日中チャートを見られない人でも確実にリスクを限定できる。
- デメリット: 一瞬の「振るい落とし(下ヒゲ)」で切らされた後、急反発するケースがある。
終値(大引け)で判断する
場中の動きは無視し、15時の終値でラインを下回っていたら翌朝の寄付きで売る方法です。
- メリット: 下ヒゲによる「無駄な損切り」を減らせる。
- デメリット: 暴落時に大引けを待つと、予想以上の大損を食らうリスクがある。
最初は「-5%で逆指値」するといった簡単なルールから始めるといいでしょう。
「大きな損失を出さない」という成功体験を積み上げることが、市場で長く生き残るコツだからです。
ダマシ確定後の「再エントリー」という考え方
一度損切りした銘柄が、数日後に再び出来高を伴って高値を抜いてくることがあります。
この時、「さっき損切りさせられたから、もうこの株は見たくない」と感情的になってはいけません。
悔しい気持ちは痛いほどわかります。
しかし、市場は投資家個人の感情を一切気にかけてくれません。
市場を動かすものは、いつだって『需給』だけです。
一度損切りになったということは、その時点では売り圧力が勝っていたという事実があるだけ。
その後、再び高値を抜いてきたのなら、それは「前回の売りをすべて飲み込むほどの強い買い」が入ったという新しい事実の現れです。
「一度振るい落としをこなした後のブレイクは、より本物である可能性が高い」のです。ルールに従って、淡々と入り直しましょう。損切りは「経費」、再エントリーは「再挑戦」です。

同じく富士通の2023年末から2024年前半のチャートです。 12/12に上場来高値を突破後、一度は-5%の損切ライン(オレンジの横線)に抵触し損切りとなりますが、ここは監視を続けるべき位置です。2/2に再度出来高を伴って高値を再突破し、「再エントリー」の絶好の機会が訪れます。 その後は、過去の高値(黄色い線)がサポートとして機能し、一度も損切りラインを割ることなく株価は上昇。1回目の損切りという「経費」を払ったからこそ、その後の倍以上の上昇を手にできた好例です。
まとめ
上場来高値投資は、勝率100%を目指す手法ではありません。「数回の小さな損切り(経費)を、一度の大きな上昇トレンドで一気に回収する」ゲームです。
- 買う前に「どこで逃げるか」を決める
- ブレイクラインの3〜5%下に逆指値を置く
- ダマシに遭ったら「大きな損失を避けられた、次に行こう」と切り替える
損切りルールを徹底したら、さっそく次のチャンスを探しましょう。


