今週の相場概況と振り返り
中東情勢の悪化が改善の兆しを見せない中、今週の日本市場は原油価格の動向に一喜一憂する不安定な値動きが続き、日経平均株価は下落を余儀なくされました。これで週足ベースでも3週連続の下げとなり、投資家にとっては非常に厳しい展開が続いています。
日本市場が祝日で休場となった3月20日、日経平均先物(CFD)は日中こそ買い戻しが入る場面もありましたが、米国の主要3指数が揃って大幅下落した流れに抗いきれず急落。一時、3月9日につけた直近安値の51,174円を下回る水準まで売り込まれ、週明けの現物市場が一段と厳しい下値模索を強いられることを示唆しました。
現物の日経平均は辛うじて75日移動平均線に支えられていますが、週明けはこのラインがサポートとして機能するか、あるいは強力なレジスタンス(上値抵抗線)に転じてしまうかの瀬戸際に立たされます。仮に3/9安値を明確に割り込む展開となれば、昨年10月から年末にかけての厚い出来高帯が存在する50,000円の大台、さらにはそのレンジ下限である48,000円近辺までの調整を覚悟する必要が出てきました。こうした節目の水準まで売り込まれた場合、13週線や6ヶ月移動平均線も上値を抑える要因となるため、相場の自律反発には短くない日柄調整が必要になるかもしれません。
INPEX(1605)
3/9に取り上げた銘柄です(下記のチャートの白い矢印がご紹介した日です)。
取り上げ時は、イラン情勢の緊迫化を背景に日経平均が51,000円台まで急落する総崩れの展開でしたが、原油高を味方に「別世界」の逆行高を演じました。翌10日こそ下落して始まりましたが、その後は地合いの悪化を一切感じさせない強さで5日線とボリンジャーバンド+2σを挟んだバンドウォークを継続。3/13に再び上場来高値を更新すると、今週は毎営業日上場来高値を更新し続けるという驚異的なモメンタムを見せました。

株価は連日の上場来高値更新により、25日移動平均線との乖離率はやや拡大傾向にあります。しかし、現状では過熱感による急落の兆候はなく、崩れる気配が見えないほど買い意欲が旺盛です。今後、利益確定売りや外部環境の変化で下押しする場面があっても、直近で再ブレイクを果たした3/2の高値圏や、25日線が位置する4,000円の大台付近が強力なサポートとして機能する可能性が高いでしょう。
仮にそこを割り込んだとしても、2008年につけた歴史的高値である3,600円前後(上記チャートのオレンジの線、6ヶ月移動平均線付近)は市場全体が意識する厚い支持線となります。押し目を狙うのであれば、これらの節目のラインを引きつけてからの反転を確認したいところです。
オークネット(3964)
3/10に取り上げた銘柄です(下記のチャートの白い矢印がご紹介した日です)。
3月第1週から続く最悪の地合いをものともせず、ボリンジャーバンド+1σの上を這うように着実なバンドウォークを継続していました。新高値銘柄らしい底堅さを見せていましたが、3/19に突如として急落。かろうじて25日移動平均線の上で反発して引けたものの、通常時の10倍を超える記録的な出来高を伴った下げとなっており、これまでの平穏な上昇トレンドに一石を投じる不穏な動きとなっています。

突発的な大商いを伴う下落が投機的な振り落としなのか、あるいは大口の本格的な処分売りなのかによって、来週以降の景色は一変します。まずは目先、25日線(2,400円付近)でしっかりサポートされ、早々にリバウンドできるかどうかが最大の焦点です。
もし25日線を明確に割り込んでくる展開となれば、75日線も近接しており、今回の上昇の起点となった2,200円台(上記チャートのオレンジの線)までの調整も視野に入ります。出来高が急増した後の「しこり」は重くなりやすいため、安易なリバウンド狙いは避け、下値の固まりを慎重に見極めるべき局面と言えます。
良品計画(7453)
3/11に取り上げた銘柄です(下記のチャートの白い矢印がご紹介した日です)。
取り上げ後も悪地合いの中でも高値圏を維持する粘り強さを見せていましたが、3/19の市場全体の大幅下落という逆風には抗えませんでした。執筆時点ではボリンジャーバンド-1σ付近で下げ止まってはいるものの、取り上げ時の水準を下回り、サポートとして期待された25日移動平均線を割り込む形となって終えています。

直近の課題は、割り込んだ25日線を早期に奪還できるかどうかです。現在、ボリンジャーバンドがスクイーズ(収束)しており、株価が上下どちらかに大きく振れやすい状態にあります。もし25日線がレジスタンス(抵抗線)として機能してしまうようであれば、上値は重くなり、レンジ相場への移行が想定されます。
具体的には、昨年夏から直近にかけての節目である3,800円前後(上記チャートのオレンジの線)を上限、昨年11月の戻り高値である3,500円前後を下限としたボックストレンドを形成する可能性が高そうです。下値の3,500円付近(上記チャートの青い線)は比較的厚いサポート帯ですが、ここを抜けると下は75日線と200日線がほぼ同じ位置のためサポートがあまり存在せず一段下の調整を警戒する必要があります。
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(6085)
3/12に取り上げた銘柄です(下記のチャートの白い矢印がご紹介した日です)。
年初から株価20倍という驚愕の上昇劇を見せたのち、高値から半値まで押したところで再度のATH更新を捉え、3/12にピックアップしました。紹介直後の3営業日でさらに1.5倍近くまで吹き上がるという圧倒的な破壊力を見せましたが、3/17に高値を付けた後は一転して叩き売られ、直近2営業日は連続ストップ安という文字通り「天国から地獄」の激しい値動きとなりました。

現在は、過熱したマネーが急速に引き揚げるパニック的な下げ局面です。過去の上場日の高値であり、今回のリバウンドの起点となった1,800円(上記チャートのオレンジの線)〜2,000円のエリアは、心理的にもテクニカル的にも一度は買い戻しが入るリバウンド期待のポイントとなります。
ただし、これはあくまで短期的な需給を狙った投機的なエントリーであり、実施には一瞬の判断を誤れば致命傷になりかねない厳格なリスク管理が求められます。再び持続的な上昇トレンドに戻るためには、今回の急落で生じた膨大な「しこり」を解消するための時間調整、あるいは相場を再度熱狂させる新たな強力材料が不可欠となるでしょう。
OATアグリオ(4979)
3/13に取り上げた銘柄です(下記のチャートの白い矢印がご紹介した日です)。
取り上げた際はボリンジャーバンド+3σを突き抜ける極めて強いモメンタムを見せており、その翌営業日もさらに上場来高値を更新しました。しかし、さすがに短期的な買われすぎから息切れ感が出てきたのか、その後は3営業日連続で値を下げる展開となりました。3連敗中ではあるものの、依然としてボリンジャーバンド+1σの上方をキープしており、現時点では健全な押し目の範囲内と言える動きです。

今後の注目点は、3/16と17に付けた長い上髭部分の出来高帯が、重い「しこり」として機能するかどうかです。上昇の勢いが再開した際、この17日高値付近をスムーズに抜けることができれば、再び上場来高値更新に向けた強い流れが期待できます。
一方で、調整がさらに深まる場合には、右肩上がりの25日移動平均線や、昨年9月の高値である2,600円前後(上記チャートのオレンジの線)がサポートラインとして意識されます。これらのラインで底堅さを確認できれば、中期的な上昇トレンドは維持されていると判断できそうです。
【上場来高値ウォッチ】週次パフォーマンス
私が先週ピックアップした銘柄が、その後どのような軌跡を辿ったのかを数値化して振り返ります。
※同一銘柄を複数回取り上げた場合は、最初の紹介日を基準としています。
※ピックアップした銘柄のパフォーマンスを事後検証するものであり、売買を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
週次パフォーマンス表(3/9〜3/13 紹介分)
| 銘柄コード | 銘柄名 | 紹介日 | 紹介翌日始値 | 3/19終値 | 騰落率 | 損益額 | 3/19までの 最高値 |
騰落率 | 3/19までの 最安値 |
騰落率 | 紹介日 52週ATH回数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7685.T | BuySell Technologies | 3/9 | 6,520 | 6,610 | +1.38% | 90 | 7,070 | +8.44% | 6,410 | -1.69% | 26回 |
| 1605.T | INPEX | 3/9 | 3,950 | 4,700 | +18.99% | 750 | 4,801 | +21.54% | 3,935 | -0.38% | 8回 |
| 7318.T | セレンディップ・ホールディングス | 3/10 | 1,940 | 1,500 | -22.68% | -440 | 1,960 | +1.03% | 1,480 | -23.71% | 36回 |
| 3964.T | オークネット | 3/10 | 2,507 | 2,404 | -4.11% | -103 | 2,593 | +3.43% | 2,362 | -5.78% | 44回 |
| 157A.T | グリーンモンスター | 3/10 | 1,286 | 1,118 | -13.06% | -168 | 1,595 | +24.03% | 1,115 | -13.30% | 1回 |
| 7453.T | 良品計画 | 3/11 | 3,700 | 3,516 | -4.97% | -184 | 3,773 | +1.97% | 3,498 | -5.46% | 43回 |
| 6994.T | 指月電機製作所 | 3/11 | 1,170 | 998 | -14.70% | -172 | 1,195 | +2.14% | 997 | -14.79% | 3回 |
| 5985.T | サンコール | 3/11 | 2,150 | 1,983 | -7.77% | -167 | 2,415 | +12.33% | 1,911 | -11.12% | 10回 |
| 4578.T | 大塚ホールディングス | 3/12 | 10,990 | 10,720 | -2.46% | -270 | 11,175 | +1.68% | 10,680 | -2.82% | 5回 |
| 6085.T | アーキテクツ・スタジオ・ジャパン | 3/12 | 3,800 | 2,600 | -31.58% | -1,200 | 5,300 | +39.47% | 2,600 | -31.58% | 7回 |
| 4979.T | OATアグリオ | 3/13 | 3,045 | 2,760 | -9.36% | -285 | 3,350 | +10.02% | 2,751 | -9.66% | 20回 |
| – | 合計 | – | 43,261 | 40,892 | -5.48% | -2,369 | – | – | – | – | – |
振り返りと考察
3月2週の検証:指数下落局面における銘柄選別の成否
3月2週ピックアップ銘柄の平均騰落率は-5.48%となり、3月1週ピックアップ銘柄の+7.55%という良好な結果から一転して厳しい着地となりました。先週は日経平均が週足で下落する軟調な地合いでありながら、ピックアップした銘柄群が逆行高を見せていたのに対し、今週は市場全体のパニック的な売りに抗いきれない銘柄が目立ちました。この差は、単なる相場の勢い(モメンタム)の有無だけでなく、取り上げたタイミングにおける個別銘柄の需給状況や、その時々の市場テーマとの合致具合が色濃く反映された結果と言えます。
特に日経平均が51,000円台まで突っ込むような極端なリスクオフ局面では、いかに個別銘柄のテクニカルが良好であっても、買い支えが機能しにくい現実が改めて浮き彫りになりました。
上場来高値更新回数と実需の乖離
今回のデータで注目すべきは、52週上場来高値更新回数が必ずしも下値の堅牢性を保証しなかった点です。セレンディップ・ホールディングス(36回)や良品計画(43回)のように、長期で実績を積み上げてきた銘柄が大幅な調整を強いられた一方で、更新回数がまだ8回に留まっていたINPEXが+18.99%と独歩高を演じました。これは「回数=信頼」という単純な図式だけでは説明がつかず、有事における原油高という強力なファンダメンタルズの変化が、過去のテクニカル的な蓄積を凌駕したケースと言えます。回数が多い銘柄は市場の注目度が高い分、地合い悪化時には利益確定売りの受け皿になりやすい側面もあり、更新回数の多寡が防波堤になるのか、あるいは売り圧力を呼ぶ火種になるのか、今後さらにサンプルを重ねて検証していきます。
投機的資金の流入とボラティリティの罠
一方で、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(7回)やグリーンモンスター(1回)のような短期間での急騰銘柄が、地合いの暗転とともに急速に崩れた事実は無視できません。特にアーキテクツの-31.58%という極端な下げは、上場来高値付近の需給が極めて流動的で、投機的な資金移動に左右されやすいことを物語っています。3月1週のJMACS(-33.78%)も同様の傾向を示していましたが、更新回数が少なく、かつ垂直に近い上昇を見せた銘柄は、トレンドが折れた際の「逃げ足の速さ」がパフォーマンスを決定づける重要な要素となります。モメンタム投資において、どのタイミングで「実需」から「投機」へ質が変化するのかを見極めることが、今後の大きな課題となりそうです。
まとめ
3月2週の検証を通じて、上場来高値更新という事象の裏側に潜む需給の複雑さが改めて浮き彫りとなりました。指数の下落に抗って利益を出せる銘柄もあれば、過去の実績を打ち消すほどの急落に見舞われる銘柄もあり、単一の指標で結論を出すにはまだデータが不足しています。
INPEXのようにテーマ性が勝る場面もあれば、回数に関わらず全体相場の波に飲み込まれる場面もあり、相場環境に応じた柔軟な視点が欠かせません。今回、上場来高値更新の「回数」がパフォーマンスにどのような影響を与えるのか、あるいは地合いによってその役割がどう変化するのかという新たな視点が得られました。今後も予断を持たずに検証を継続し、上場来高値投資に資するデータや視点がないかを探していきます。


