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ローソク足のシグナルは当たるのか? 三尊・包み足など17種を306万回で検証

実践ガイド

当ブログの独自検証記事です。本記事の数値は、外部サービスから取得した株価データ(分割調整後)をもとに、ローソク足の形を機械的に判定して集計したものです(集計日 2026年11月3日・上場廃止銘柄を含む5,414銘柄・個別株は2000年以降、日経平均は1989年以降)。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。


「三尊天井が出たら売り」「赤三兵は上昇のサイン」「下放れ二本黒は弱気」。チャートの入門書や投資サイトを開くと、名前の付いたローソク足のシグナルがたくさん紹介されています。多くは江戸時代の米相場に由来する酒田五法の考え方で、今もテクニカル分析の定番です。

ただ、こうした解説で「どのくらいの確率で当たるのか」まで書かれていることは、あまりありません。当たった例のチャートは載っていても、外れた例はたいてい載っていないからです。

そこで当ブログでは、有名なシグナル17種を、2000年以降の日本株5,414銘柄(上場廃止銘柄を含む)で機械的に探し、出現した約306万回について、その後に本当に予想どおりの向きへ動いたのかを数えました。日経平均そのもの、売買代金の大きい主導株、急騰中の銘柄、出来高の少ない銘柄、さらに日足・週足・月足で、当たり方が変わるのかも確かめています。

結論を先に書くと、ほとんどのシグナルは、ふだんの日と比べて当たる割合が±3ポイントほどしか変わらず、しかも多くは、ふだんより少しだけ外れやすい側に出ていました。以下、順に見ていきます。


  1. 1. 結論:名前の付いたシグナルの多くは、コイン投げとほぼ同じ
  2. 2. 検証した17のシグナル
  3. 3. どう調べたか:「ふだん」と比べないと当たったかは分からない
    1. 当たり=シグナルが示す向きに動いたか
    2. 比べる相手は「同じ地合いのふだんの日」
    3. 対象と分け方
    4. どのくらいの差があれば「使える」のか
  4. 4. 17シグナルの当たり率:ふだんとの差はほとんどが±3ポイント以内
    1. 「たまたま」ではないかを年ごとに確かめる
    2. 当たり外れの一部は「直前の値動きの向き」で説明できそう
    3. 翌日・翌々日に絞っても、使える差は残らない
  5. 5. 日経平均では当たるのか:回数が少なすぎて判定できない
  6. 6. 主導株・一発屋・薄商い株で変わるか
    1. 主導株:個別株全体とほぼ同じ
    2. 急騰中の銘柄:売りシグナルが少し当たりやすいが、回数は少ない
    3. 薄商い株:ローソク足の形のシグナルが外れやすい
    4. 日足・週足・月足:長い足ほど当たるわけではない
  7. 7. 実例:キオクシアとペッパーフードで何が起きたか
    1. キオクシア:上昇中の売りシグナルは4回続けて外れた
    2. ペッパーフード:下落中の買いシグナルは6回中5回外れた
  8. 8. 投資にどう活かすか
    1. シグナルを売買の「合図」にしない
    2. 「大きく上げた直後は上がりにくい」は知っておいてよい
    3. 売り時は「形」より、あらかじめ決めた値幅で決める
    4. 薄商い株はチャートより出来高を先に見る
  9. 9. この検証の限界
  10. まとめ
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1. 結論:名前の付いたシグナルの多くは、コイン投げとほぼ同じ

最初に、検証結果をまとめておきます。

問い答え根拠
シグナルは当たるのか多くはほぼ当たらない17種のうち15種は、ふだんの日との差が±3ポイント以内(日足・20営業日後)
むしろ外れやすいことはあるか多くはふだんより少し外れやすい包み足・明星・三兵・たくり線は、27年のうち2〜5年しか「ふだん」を上回らなかった
当たるシグナルはあるか「三空」と「首吊り線」だけ、わずかに当たる三空踏み上げは+5.0ポイントで、27年中25年で「ふだん」を上回った
日経平均では当たるか回数が少なすぎて判定できない1989年以降でも1つのシグナルにつき11〜175回。誤差は±7〜±29ポイント
銘柄のタイプで変わるか大きくは変わらない主導株・急騰株・薄商い株とも、三空を除けば差はおおむね±5ポイント以内
日足・週足・月足で変わるか長い足ほど当たるわけではない月足は回数が少なく、特定の時期に固まるため数字がぶれやすい

「外れやすい」といっても、大きく外れるわけではありません。全個別株・日足20営業日後では、どのシグナルも当たる割合は46〜54%の間に収まり、ほぼ半々です。シグナルを見て売買しても、ふだんと比べて目に見えて有利にも不利にもならない、というのが実態でした。


2. 検証した17のシグナル

この記事で調べたシグナルは次のとおりです。酒田五法の「三山(三尊)」「三川(明星)」「三空」「三兵」を中心に、よく紹介される形を選びました。

シグナル向きこの記事での判定条件(要点)
陰の包み足売り上昇中、陽線の実体を次の陰線の実体が丸ごと包む
陽の包み足買い下落中、陰線の実体を次の陽線の実体が丸ごと包む
宵の明星売り上昇中、大きめの陽線 → 1本目の実体より上にある小さな足 → 1本目の実体の半分より下で終わる陰線
明けの明星買い下落中、大きめの陰線 → 1本目の実体より下にある小さな足 → 1本目の実体の半分より上で終わる陽線
三羽烏売り上昇中、実体のしっかりした陰線が3本、始値も終値も切り下げる
赤三兵買い下落中、実体のしっかりした陽線が3本、始値も終値も切り上げる
首吊り線売り上昇中に直近10本の高値を更新し、長い下ヒゲ(実体の2倍以上)を付けた足
たくり線買い下落中に直近10本の安値を更新し、長い下ヒゲ(実体の2倍以上)を付けた足
下放れ二本黒売り窓を開けて下げた陰線の後、それより上で寄り付いた陰線がもう1本(どちらも窓の下)
三空踏み上げ売り窓を開けて上げる足が3本続く(酒田五法では「売り向かえ」)
三空叩き込み買い窓を開けて下げる足が3本続く(酒田五法では「買い向かえ」)
三尊天井売り3つの山の真ん中が最も高く、終値がネックライン(2つの谷を結ぶ線)を割った
逆三尊買い三尊天井の逆さま。終値がネックラインを上に抜けた
ダブルトップ売りほぼ同じ高さ(差3%以内)の2つの山の後、終値が間の谷を割った
ダブルボトム買いほぼ同じ深さの2つの谷の後、終値が間の山を上に抜けた
デッドクロス売り短期の移動平均線が長期線を上から下に抜けた(日足25日/75日・週足13週/26週・月足12か月/24か月)
ゴールデンクロス買い短期の移動平均線が長期線を下から上に抜けた(同上)

「上昇中」「下落中」は、パターンが始まる直前の終値が、その10本前の終値より高いか低いかで判定しました。窓はヒゲを含めて判定しています(窓の考え方は「埋めない窓はない」は本当かで詳しく説明しています)。

同じシグナルでも、解説する本やサイトによって細かい条件は少しずつ違います。この記事の判定は一つの代表的な定義にすぎない点は、最後の「検証の限界」でも触れます。


3. どう調べたか:「ふだん」と比べないと当たったかは分からない

当たり=シグナルが示す向きに動いたか

シグナルが出た足の終値から、一定の本数が過ぎた後の終値までの値動きを見ました。買いシグナルなら上がっていれば当たり、売りシグナルなら下がっていれば当たりです。中心に見たのは、日足なら20営業日後(約1か月)、週足なら13週後(約3か月)、月足なら6か月後です。

比べる相手は「同じ地合いのふだんの日」

ここが一番大事な点です。日本株の個別株は、シグナルの有無に関係なく、すべての日で数えても、20営業日後に上がっている割合が50.0%、下がっている割合が48.5%あります(残りは変わらず)。つまり、どんなシグナルでも、何もしなくてもおよそ半分は当たります。

さらに、陰の包み足のように「上昇中」を前提にするシグナルは、上昇中の日だけと比べる必要があります。上昇中の日とそれ以外の日では、その後の値動きの傾向が少し違うからです。そこでこの記事では、シグナルが前提とする地合い(上昇中・下落中)を満たすすべての日を「ふだん」とし、その当たり割合と比べました。

対象と分け方

  • 個別株:上場廃止した銘柄を含む5,414銘柄の、2000年以降の足(ETFは除く)
  • 指数:日経平均(1989年以降。それより前は始値・高値・安値のデータがそろわない)、TOPIX(2000年以降。ただし日次のデータがそろうのは2004年ごろから)
  • 銘柄のタイプ(シグナルが出た時点で分かる情報だけで判定。後から見て「一発屋だった」で分けると、結果を知っている分だけ有利になるため)
タイプ条件
主導株20日平均の売買代金が、その日の全銘柄で上位50位以内
急騰中(一発屋候補)株価が1年前(250営業日前)の3倍以上
薄商い20日平均の売買代金が1,000万円未満
普通の銘柄上の3つのどれにも当てはまらない

上場廃止で途中から株価がなくなった銘柄は、最後の終値で手放したものとして数えています。

どのくらいの差があれば「使える」のか

結果を見る前に、物差しを決めておきます。目安は、当たり率がふだんより3〜5ポイント高い(約53〜55%)ことです。

理由は売買のコストです。SBI証券や楽天証券のように、条件を満たせば国内株の売買手数料が0円になる証券会社は増えました。それでも、コストがゼロになったわけではありません。株には「いま買える値段(売り気配)」と「いま売れる値段(買い気配)」の開き(スプレッド)があります。すぐに約定させようとすると、そのたびにこの開きの分だけ不利な値段で売り買いすることになるのです。株価500円の銘柄なら、値段の刻み1円だけで0.2%に当たります。

目安としては、往復で、売買の多い大型株なら0.1%前後、小型株なら0.3〜0.5%ほどです。20営業日ごとに乗り換えれば、年に12回以上この負担がかかります。コストを払っても手元に残り、値動きの大きい個別株を持つリスクにも見合うには、1回あたり平均で0.5〜1%ほど、ふだんより多く上がってほしいところです。

個別株の20営業日の値動きは上下に大きくばらつくので、平均が1%違っても、当たり率は数ポイントしか動きません。この記事のデータでは、平均の差1%がおよそ当たり率4〜6ポイントに当たりました。そのため、0.5〜1%の上乗せは当たり率で3〜5ポイントになります。逆に言えば、個別株の20営業日後で「6割当たる」シグナルは、まず出てきません。

当たり率のほかにも、次の点がそろって初めて「使える」と言えます。

  • 年ごとに見ても、多くの年でふだんを上回っている(偶然なら半分の年で上回る)
  • シグナルを見てから入れる値段(翌日の始値)で買っても、差が残る
  • 当たったときの上げ幅に比べて、外れたときの下げ幅が大きすぎない

4. 17シグナルの当たり率:ふだんとの差はほとんどが±3ポイント以内

全個別株・日足で、シグナルが出た日の当たり率と、同じ地合いのふだんの当たり率を並べたのが次の図です。

シグナル向き回数当たり率ふだん差
三空踏み上げ売り35,81953.4%48.5%+5.0
三空叩き込み買い32,00952.5%50.0%+2.5
首吊り線売り164,29050.4%49.0%+1.3
三尊天井売り56,08948.6%48.5%+0.1
ゴールデンクロス買い153,93349.2%50.0%−0.7
デッドクロス売り153,39647.6%48.5%−0.9
ダブルボトム買い151,87349.1%50.0%−0.9
陰の包み足売り411,00847.9%48.9%−1.0
陽の包み足買い332,07448.8%50.4%−1.6
逆三尊買い57,24248.4%50.0%−1.6
下放れ二本黒売り115,16846.8%48.5%−1.6
宵の明星売り34,98347.1%48.8%−1.7
ダブルトップ売り146,00246.7%48.5%−1.7
三羽烏売り121,02847.0%48.8%−1.8
明けの明星買い33,34548.4%50.2%−1.9
たくり線買い215,81747.7%50.4%−2.7
赤三兵買い90,83147.1%50.2%−3.2

(差の単位はポイント。全個別株・日足・20営業日後。差は四捨五入する前の値で計算しているため、表の数字どうしを引き算した値と0.1ずれることがあります)

一番当たった三空踏み上げでも、当たり率は53.4%です。10回に5回強しか当たらない、という意味です。それでも、ふだんとの差(+5.0ポイント)は、前の節で決めた目安(3〜5ポイント)に届く唯一のシグナルでした。ほかの16種は、目安に届きません。一方で、陽の包み足や赤三兵といった「上昇のサイン」とされる形は、ふだんの日よりむしろ上がりにくい結果になりました。

期間を変えても、この並びはほとんど変わりません。5営業日後でも60営業日後でも、三空踏み上げ(+6.4/+4.6ポイント)が一番で、包み足・明星・三兵・たくり線はマイナスのままでした。

「たまたま」ではないかを年ごとに確かめる

数十万回も数えると、わずかな差でも統計的には「偶然ではない」と判定されやすくなります。そこで、年ごとに当たり率を出し、27年のうち何年で「ふだん」を上回ったかを数えました。偶然の差なら、半分の13〜14年前後になるはずです。

グループシグナル(「ふだん」を上回った年数)
ふだんを上回る年が多い三空踏み上げ(25年)・三空叩き込み(25年)・首吊り線(21年)
半々(偶然と区別できない)三尊天井・逆三尊・デッドクロス(各12年)
ふだんを下回る年が多いゴールデンクロス・ダブルボトム(各8年)、ダブルトップ(7年)
ほぼ毎年ふだんを下回る宵の明星・明けの明星(各5年)、下放れ二本黒(4年)、陰の包み足・三羽烏(各3年)、陽の包み足・赤三兵・たくり線(各2年)

三尊天井・逆三尊・デッドクロスは、上回る年と下回る年がほぼ半々で、偶然と区別がつきません。ゴールデンクロスとダブルボトム、ダブルトップは、下回る年のほうがやや多い程度です。包み足・明星・三兵・たくり線は、外れやすい方向にほぼ毎年そろっていました。差の大きさは1〜3ポイントと小さいものの、「上昇のサイン」の後に少しだけ上がりにくく、「下落のサイン」の後に少しだけ下がりにくい、という傾向は、たまたまではなさそうです。

暴落の日などに多くの銘柄で同時に出る影響も確かめました。同じ日に出たシグナルを1票にまとめて数え直しても、三空踏み上げは+5.2ポイントで、全体の並びも変わりませんでした。

「昔は効いていたが、個人投資家が増えて効かなくなったのでは」という見方も確かめました。2000〜05年・06〜12年・13〜19年・20〜26年の4つの時期に分けても、当たる側(三空踏み上げ・首吊り線)は4つの時期すべてで当たる側、外れる側(たくり線・赤三兵・下放れ二本黒)はすべての時期で外れる側でした。少なくとも2000年以降、時代とともに効かなくなった跡は見られません。なお、個別株の株価データは1999年からしかないため、ネット証券が広まる前の時代は調べられていません。

当たり外れの一部は「直前の値動きの向き」で説明できそう

当たるシグナルと外れるシグナルには、ある程度の共通点があります。

  • 当たる側(三空踏み上げ・首吊り線・三空叩き込み):直前に大きく動いた方向と逆に賭けるシグナル。三空踏み上げは3日続けて窓を開けて上げた後の「売り」、首吊り線は高値を更新した日の「売り」です。
  • 外れる側(陽の包み足・赤三兵・明けの明星など):直前に動いた方向と同じ向きに賭けるシグナル。陽の包み足は、大きな陽線で上げた日の「買い」です。

株価には、大きく上げた直後は、その後少し上がりにくいというクセがあります。この記事のデータでも、1日で大きく上げた日(上位10%・中央値+4.0%)の20営業日後に上がっていた割合は46.6%で、ふだんの50.0%より低くなっていました。月足でも、1か月で大きく上げた月(上位10%・中央値+18.7%)の6か月後に上がっていた割合は45.8%です。一方、1日で大きく下げた日(下位10%)の20営業日後に上がっていた割合は50.0%で、ふだんと同じでした。このクセがはっきり出るのは、上げた側です。

名前の付いた形の当たり外れの一部は、この「直前の値動き」で説明できそうです。直前の足の色と値動きの大きさまでそろえた日と比べ直すと、17種のうち約半数で差が縮みました(三空踏み上げは+5.0→+3.1ポイント)。

ただし、すべてがこれで説明できるわけではありません。首吊り線(+1.3→+1.7)と三空叩き込み(+2.5→+3.1)は、そろえても差が縮みませんでした。三空叩き込みは「下げた後の買い」なので、上げた側でしか目立たないこのクセとは向きも合いません。また、たくり線は安値を更新した日の「買い」で、直前の動きと逆に賭ける形なのに、外れやすい側(−2.7ポイント)に残っています。

いずれにしても、残る差は三空を除けば±3ポイント程度です。形そのものに、売買の判断に使えるほどの意味は見つかりませんでした。

翌日・翌々日に絞っても、使える差は残らない

「1か月後では効き目が薄れるだけで、出た直後なら効くのでは」と考える方もいるでしょう。そこで、シグナルが出た翌営業日・2営業日後・5営業日後の値動きも確かめました。ここでは当たり率ではなく、同じ日のほかの銘柄と比べて平均で何%上下したかを見ています(直前の足の値動きの大きさもそろえています)。

17種のほとんどは、差が±0.1%前後でした。小型株では、売買のたびに手数料と売り買いの値段の開き(スプレッド)で0.1〜0.3%程度かかります。これより小さい差は、実際の売買では残りません。

目立ったのは首吊り線とたくり線です。

シグナル翌日の差うち翌日の寄り付きまで(窓)翌日の寄り付きから引けまで
首吊り線(売り)0.20%下げ(言い伝えどおり)0.20%下げほぼ0%
たくり線(買い)0.33%下げ(言い伝えと逆)0.31%下げほぼ0%

(全個別株・日足・2000年以降。同じ日のほかの銘柄との差)

首吊り線は、27年すべてで翌日は言い伝えどおり下がる側でした。ただ、その下げはほぼ全部が翌朝の寄り付きの窓で起きています。ローソク足の形は終値で決まるので、シグナルを見てから注文を出せるのは早くても翌日の寄り付きです。その時点で、差はもう残っていません。たくり線も同じで、言い伝えと逆の下げが翌朝の寄り付きで起き、その後はほぼ動きません。

例外は三空踏み上げです。翌日の寄り付きから数えても、5営業日後に0.7%ほど下がる側の差が残りました(20営業日後で一番当たったのと同じシグナルです)。ただし翌日の時点では、言い伝えどおりだったのは27年のうち13年だけです。売買コストを差し引いて利益が残るかどうかまでは、確かめていません。


5. 日経平均では当たるのか:回数が少なすぎて判定できない

「個別株はノイズが多いから、指数ならシグナルが効くのでは」と考える方もいるでしょう。そこで、日経平均の日足(1989年以降の約38年分)でも同じように数えました。

結果は「判定できない」です。約38年分の日足を使っても、一番多い陰の包み足で175回、三尊天井は12回、三空叩き込みは11回しか出ていません。この回数では、当たり率に±7〜±29ポイントの誤差が付きます。

たとえば日経平均の三尊天井は、20営業日後に下がっていたのが12回中3回(25%)で、ふだん(46%)より外れているように見えます。しかし誤差の幅は±24ポイントあり、ふだんの値も幅の中に入ります。どのシグナルも、誤差の幅がふだんの値にかかっていて、偶然と区別できませんでした。TOPIX(日次データがそろう2004年ごろ以降が中心)でも同じです。

「日経平均で三尊天井が出たから暴落する」といった話を見かけたら、そもそも数十年に十数回しか出ない形で、当たる確率を語れるほどの回数がない、という点は覚えておいて損はないでしょう。


6. 主導株・一発屋・薄商い株で変わるか

次に、銘柄のタイプ別に見ました(日足・20営業日後)。あわせて、日足・週足・月足の違いも1枚にまとめています。

主導株:個別株全体とほぼ同じ

売買代金の上位50位に入る主導株でも、差はおおむね±5ポイント以内です。赤三兵が−5.0ポイントと外れ、首吊り線が+3.6ポイントと当たる、という並びも全体と同じでした。「多くの投資家が見ている人気株なら、シグナルが自己実現的に効く」という傾向は見られません。

急騰中の銘柄:売りシグナルが少し当たりやすいが、回数は少ない

1年で3倍以上になった急騰中の銘柄では、三空踏み上げが+7.2ポイント、ダブルボトムが+6.1ポイント、ダブルトップが+4.6ポイントと、全体より差が大きく出ました。陰の包み足(+1.8)や宵の明星(+3.7)も含め、売りシグナルはわずかに当たる側です。そもそも急騰中の銘柄は、シグナルの有無に関係なく、20営業日後に下がっている割合が57.4%と高めです。ただし回数は数百〜千回程度で、急騰株は値動きが荒いぶん数字もぶれます。「急騰株ではシグナルが効く」と言えるほどの差ではありません。

薄商い株:ローソク足の形のシグナルが外れやすい

20日平均の売買代金が1,000万円に届かない薄商い株では、包み足・明星・三兵・たくり線といったローソク足の形のシグナルが、買いも売りもそろって3〜4ポイント外れる側に出ました。

これは、出来高が少ない銘柄では、少しの注文で終値が動きやすいためと考えられます。たまたま高く付いた終値で陽線になり、翌日以降に元の水準へ戻る、ということが起きやすいのです。実際、直前の足の色と値動きの大きさをそろえて比べ直すと、陰の包み足は−3.3ポイントが−1.5ポイントに縮みました。薄商い株のローソク足は、形を読む以前に、値段そのものが当てになりにくいと考えたほうがよさそうです。

日足・週足・月足:長い足ほど当たるわけではない

「日足はだましが多いが、週足や月足のシグナルは信頼できる」とよく言われます。しかし結果を見ると、月足でも差は±6ポイント程度(回数が300未満のものを除く)で、当たるシグナルが増えたわけではありませんでした。

月足では、ダブルボトム(+4.6ポイント)やゴールデンクロス(+2.9ポイント)が当たっているように見えます。ところが、同じ月に出たシグナルを1票にまとめて数え直すと、どちらもマイナス(−2.5/−2.4ポイント)に入れ替わりました。月足のシグナルは回数が少なく、特定の時期に固まって出ます(多いものでは、上位10か月に全体の2〜4割が集中)。その時期の相場が良かったか悪かったかで、数字が大きく振れてしまうのです。

長い足のシグナルが「信頼できる」ように見えるのは、回数が少なくて当たった例が目立ちやすいから、というのが実態に近いと考えます。


7. 実例:キオクシアとペッパーフードで何が起きたか

数字だけでは実感しにくいので、2つの銘柄で実際のチャートを見てみます。

キオクシア:上昇中の売りシグナルは4回続けて外れた

2024年12月に上場したキオクシアホールディングス(285A)は、2025年から2026年にかけて株価が何十倍にもなった、この時期の代表的な主導株です。

この上昇の途中で、週足の「陰の包み足」(売りシグナル)が2025年7月から2026年2月までに4回出ました。13週後の騰落率は+179%、+128%、+125%、+179%と、4回とも外れています。5回目の2026年7月は13週後に−13%で、ここで初めて当たりました。

強い上昇トレンドの中では、売りシグナルが何度も出ることがあります。キオクシアの場合、そのたびに売っていたら、上昇のほとんどを取り逃がしていたことになります。ただし前の節で見たとおり、急騰中の銘柄全体では売りシグナルはむしろわずかに当たる側でした。キオクシアは「外れ続けることもある」という例です。

ペッパーフード:下落中の買いシグナルは6回中5回外れた

ペッパーフードサービス(3053)は、「いきなり!ステーキ」の急拡大で2017年に株価が急騰し、その後に業績の悪化とともに大きく下げた銘柄です(詳しくは大化け株カルテ:ペッパーフードサービス)。

終値の天井(2017年10月)から2か月後の2017年12月には、月足で「宵の明星」(売りシグナル)が出ていました。6か月後は−9%、1年後は−43%で、これは当たりです。

一方、下落の途中では、週足の「陽の包み足」(買いシグナル)が2018〜2019年に6回出ました。13週後に上がっていたのは2018年2月の1回(+12%)だけで、2018年7月は−22%、2019年の4回は−30%、−22%、−1%、−16%と、6回中5回は下がっています。

2つの例に共通するのは、シグナルが強いトレンドに逆らう向きに何度も出て、外れが続くことがあるという点です。たまたま天井や底で出た1回は「当たった例」として語られますが、その前後で外れた何回かは、あまり語られません。


8. 投資にどう活かすか

シグナルを売買の「合図」にしない

この記事の結果からは、名前の付いたシグナルが出たことを理由に売り買いしても、ふだんより有利になるとは言えません。キオクシアの例のように、強い上昇の途中で出た売りシグナルが外れ続けることもあります。シグナルで売るかどうかより、あらかじめ決めた損切り・利確の値幅で判断するほうが一貫します。

「1つでは弱くても、いくつも重なれば信頼できる」とも言われます。そこで、ローソク足の買いの形・ゴールデンクロス・RSI(14日)の上抜けが直近5営業日以内に重なった日も数えました。結果は、重ねても有利にはならず、買いはむしろ少し悪くなりました。直前の値動きと直近20日の騰落が同じ銘柄と比べると、20営業日後の差は、形だけで−0.27%、形とゴールデンクロスが重なって−0.24%、3つが重なって−0.33%です(RSIは50の上抜けで判定)。買いの形もゴールデンクロスも「上げた後」に出るので、重ねるほど「大きく上げた直後」を選んでしまうのだと考えられます。

なお、RSIが30を上抜けた日だけを見ると、20営業日後に上がっていた割合は53.6%で、当たっているように見えます。ただ、直近20日で同じくらい下げた銘柄と比べると、差は+0.03%でほぼ消えました。「下げた後は少し戻りやすい」という値動きのクセを拾っているだけで、RSIのクロスに上乗せがあるわけではありません。

「大きく上げた直後は上がりにくい」は知っておいてよい

当たる側に出た三空踏み上げや首吊り線は、「急に上げた直後は追いかけない」という教訓として読めます。ただ、差は数ポイントで、これだけで安定して利益を出せるかどうかは、この検証では確かめていません。高値更新の場面での飛びつき方は、高値更新で飛びつかないための判断基準でも整理しています。

売り時は「形」より、あらかじめ決めた値幅で決める

シグナルの形に頼らなくても、損切りは決められます。当ブログでは、買値からATR×2下がったら機械的に損切りすることを基本ルールにしています(ATRとは・資金管理とポジションサイズの決め方)。逆指値注文を使えば、チャートを見ていない時間でも自動で実行できます。逆指値やトレール注文の使い勝手は証券会社によって違うので、新高値投資におすすめの証券会社5選や楽天証券のレビューも参考にしてください。

薄商い株はチャートより出来高を先に見る

売買代金が小さい銘柄では、ローソク足の形そのものが当てになりにくいことが分かりました。チャートを読む前に、まず出来高が十分にあるかを確かめるほうが先です(出来高の読み方)。上場来高値を更新した銘柄の出来高の倍率や25日線乖離は、上場来高値DBで毎日確認できます。


9. この検証の限界

  • シグナルの判定条件は、この記事で決めた一つの定義です。本やサイトによって条件は少しずつ違い、条件を変えれば回数や当たり率も変わります。
  • ローソク足のシグナルは、本来は出来高や相場全体の流れと組み合わせて使うものとされています。この記事は、形だけを機械的に判定した場合の結果です。
  • 「当たり」は、一定の本数が過ぎた後の終値がシグナルの向きに動いたかどうかで判定しています。途中で損切りや利確をした場合の成績とは異なります。
  • 株価は分割調整後の値で、配当は考慮していません。
  • 同じ日に多くの銘柄でシグナルが出る場面があり、1回ずつは完全には独立していません。日付ごとに1票にした集計でも結論は変わりませんでしたが、件数ほどの精度はありません。
  • 銘柄のタイプは、シグナルが出た時点で分かる情報で判定しています。後から見て「一発屋だった」銘柄だけを集めた場合の結果ではありません。

まとめ

  • 名前の付いたシグナルの多くは、コイン投げとほぼ同じです。 17種のうち15種は、当たる割合がふだんの日と±3ポイント以内しか変わりませんでした。全個別株・日足20営業日後では、どのシグナルも当たり率は46〜54%の間です。
  • 「上昇のサイン」の多くは、むしろ少しだけ外れます。 陽の包み足・赤三兵・明けの明星・たくり線は、27年のうち2〜5年しか「ふだん」を上回りませんでした。
  • わずかに当たるのは「三空」と「首吊り線」だけです。 三空踏み上げは+5.0ポイントで、27年中25年で「ふだん」を上回りました。共通点は、直前に大きく動いた方向と逆に賭けるシグナルであることです。
  • 日経平均では判定できません。 約38年分の日足でも、1つのシグナルにつき11〜175回しか出ていません。
  • 銘柄のタイプや足の長さを変えても、当たるようにはなりませんでした。 月足のシグナルが当たって見えるのは、回数が少なく特定の時期に固まるからです。薄商い株では、ローソク足の形のシグナルがそろって外れやすくなりました。

チャートの形は、相場の雰囲気をつかむ手がかりにはなります。ただ、形が出たことを売買の理由にしても、有利にはなりません。あらかじめ決めた損切りと利確のルールを守るほうが、再現性のある判断につながると考えます。

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本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載した数値は、外部サービスから取得した分割調整後の株価をもとに当ブログが機械的に集計した概算で、データの更新により変動します。過去の傾向は将来の結果を保証するものではありません。投資はご自身の判断と責任において行ってください。

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